進路情報ではなく、過去の情報なのだから、予報業務の範囲を逸脱したとは言えないと思います。
気象庁の縄張り意識が今回の事件を生んだのだといえます。
(産経新聞より)
気象庁とウェザーニューズ大バトル 業務逸脱? 台風18号情報
2年ぶりに日本列島に上陸した台風18号をめぐり、気象情報会社「ウェザーニューズ」(WN、本社・東京)が気象庁と異なる独自の上陸情報を同社のホームページ(HP)上に掲載したことへの波紋が広がっている。気象庁は「予報業務の範囲を逸脱した」としてWN社に口頭指導。WN社は「予報の範囲に入らない」と説明、両者の主張は平行線をたどったままだ。(豊吉広英)
8日に上陸した台風18号に関し気象庁は同日5時過ぎ、「愛知県の知多半島付近に上陸した」と発表した。しかし、WN社は気象庁に先駆け同日午前 4時過ぎ、「三重県志摩市に上陸した」と、携帯電話サイトの登録会員にメールを送ると同時に同社HP上に掲載した。同社はその後も「伊勢湾を通過」「知多半島に再上陸」といった情報を逐次HPに掲載した。
WN社は「アメダスのデータや有料会員から組織されるウェザーレポーターの情報などを総合的に判断した」と説明している。
一般向け気象予報業務が自由化されたのは平成7年。ただ気象庁は、緊急性の高い災害現場で無用な混乱を招く可能性があるとして「防災情報は一元化が重要」という立場をとっている。そのため予報業務の許可条件には、「台風の進路等に関する情報は、気象庁の情報の解説の範囲に留める」と記されている。
今回問題視されたのは、独自の上陸情報が「台風の進路等に関する情報」に当たるか否か、という点だ。
気象庁は「台風の上陸情報や、『今どこに台風がいる』といった実況についても“進路等に関する情報”にあたる」(民間事業振興課)と判断したという。
同庁の桜井邦雄長官も15日の定例会見で「バタバタした現場で『どっちがほんまやねん』と考えさせるのは無用なロス」と話した。
一方、WN社の森下良治広報部長は「規制されているのは『台風がどこに向かう可能性がある』といった予報。『どこに上陸した』という解析情報は、一元化が必要な防災情報に当てはまらない」と主張する。
防災情報の一元化が適用されるのは、マスコミ報道やインターネットのHPなど、不特定多数の目に触れる一般予報のみ。有料で特定の対象に配信する予報などでは予報も含めた独自情報を提供することも可能という。森下部長はこうした状況を踏まえ「情報の選択肢はあったほうがいいのでは」と訴えている。
気象庁も、どの情報を一元化とするかの判断にグレーゾーンがあることは認めながらも、WN社に説明を続け、理解を求めていく方針という。
識者はどう考えるのか。
防災システム研究所の山村武彦所長は「今回はWN社と気象庁の見解の違いがわずかだったが、大きく違うと混乱が生じる。混乱を防ぐためにも気象庁の主張は理解できる」との見方を示している。
一方、東京女子大の広瀬弘忠教授(災害・リスク心理学)は「台風がどこに上陸したという過去の話では混乱を招きようがないし、権威を持ったところが情報を一元化するという時代でもない。気象庁は縄張り意識を持たず、競争原理が働く状況を作るべきだ」と指摘している。